インドネシアにおける来日者のためのシステムの現状把握調査ー中間報告書ー
日本は2017 年に技能実習制度、2019 年に特定技能制度を創設し、国内の労働力不足の対応として外国人労働者を積極的に受け入れ始めた。昨今、GDP の比較的高い国を中心に移民労働者の受け入れを拡大している国が多くある中、将来的に、日本が労働者を受け入れていくにあたって、その環境がどのように変化していくのか不透明である。現地の視点から、現状の日本の労働者の受け入れシステムを調査し、将来の予測や現システムの改善の提言を行うことを目的に、インドネシアの送り出しに関するシステムの調査活動を開始した。現状の課題を明らかにし、持続可能な制度とするために、日本側の対応すべき点を整理したい。
現地インタビュー調査の結果概要は以下の通りである。
1.インドネシア政府は、技能実習制度、特定技能制度のそれぞれの制度趣旨に基づき管理体制を整えている。技能実習制度は研修制度であるためにインドネシアの労働省が管理、特定技能制度は海外移住労働のため移民局が管理している。しかし、特定技能制度開始後の状況としては、現場の送り出し機関の運用は2つの制度の趣旨を十分に理解できていない現状がある。
2.2023 年に開始された、技能実習制度・特定技能制度を育成就労へ変更する案についての議論は、2023 年11 月の時点、インドネシア側にその議論の背景情報が十分に伝わっていない。技能実習制度・特定技能制度の現体制の制度運用が未整理である中、新体制をどのように受け入れることができるのか、検討できず混乱しているようである。
3.現地では技能実習制度は好意的に捉えられ、継続を望む声がある。特に好意的に捉えられているのは、研修を受け、技能を習得し、インドネシアに帰国貢献できるという技能実習制度の本来の趣旨の点である。
4.特定技能制度での来日は、日本語試験や技術試験があるため、これまでの技能実習制度での来日のための研修体制では対応できず、新たな研修プログラムの確立が必要だが、いまだ確立できていない。特に、日本語の研修は技能実習生からの帰国者が実施しており、効果的な日本語学習方法が体系化されているとは言い難い。
5.特定技能制度での来日に必要な日本語試験、技術試験は受験機会が限られており、希望者全員が受験機会を得られていない。
6.送り出しのシステムは、各種教育、手続き、雇用先紹介等、機能分化され、複雑化している。そのため、どのルート(どの教育機関、送り出し機関を利用するか)で来日するかによって、当事者の費用が異なっていて不平等な状態が存在している。送り出しシステムの整理、費用の明確化が必要である。
これらを受けて現時点で日本側が対応すべきと考えられる点は以下の3 点である。
- 技能実習制度の本来の趣旨である研修、技能移転という目的は、当該国においては求められている制度であると言える。新しい制度の枠組みにも、研修や技術習得、来日帰国後のメリットにつながる視点が必要ではないか。
- 来日前の研修プログラムを充実させるために日本側は積極的に関わるべきである。特に、日本語についてはプログラムの立案から、実教育の場の支援まで、幅広い人的支援が必要ではないか。
- 特定技能制度で来日を希望する者のための日本語試験、技術試験受験の十分な機会の提供が必要ではないか。
※詳しい調査報告についてはこちらをご覧ください。
研究員:アンディ・ホリック・ラムダニ
ワオデ・ハニファー・イスティコマー
井上登紀子