インドネシアからの日本への送り出しについての調査概要
日本の1990年代から始まる労働力不足への対応として、技能実習制度は開始され、人口減少に伴う深刻な労働力不足への対応として、2019年より特定技能制度が開始されている。2023年末に、日本の在留外国人は300万人を超え、外国人労働者も240万人となった。将来もさらに労働力不足はすすむと予想されている。GDPの比較的高い国の多くでは、日本同様、労働者受け入れニーズは急増しており、昨今の円安状況の日本において、来日希望者はどのように変化していくのか、また、人権侵害の課題を抱えている技能実習制度はどのようにするべきか等について、現地の視点から、現状の日本の労働者の受け入れシステムを調査し、将来の予測や改善の提言を行なうことを目的に送り出しに関するシステムを調査することとした。
2023年度は、訪日労働者の伸びの大きいインドネシアを対象に、以下の点を中心に調査を行なった。
1.2023年の技能実習制度・特定技能制度の変更議論の中、インドネシア・日本における労働人材派遣の体制整備にどのような変化をもたらしているのか
2.インドネシアの送出し機関がどのようにネットワークを構築するのか
3.来日希望者と技能実習制度、特定技能制度は適合しているのか
4.インドネシア人技能実習生・特定技能実習生の育成や保護拡充がどのように適応されているのか
5.技能実習生・特定技能実習生はインドネシア・日本の社会、経済、政治にどのような影響を与えているのか
2023年8月〜2024年2月、西ジャワを中心とし、東ジャワ、バリ島等、送り出しに関わる機関に対し、インタビュー調査を行なった。送り出しに関わる機関とは、技能実習、特定技能、インターンシップ、高度人材、日本語学校等である。さらに、行政機関にもインタビュー調査を実施した。約30の機関等への調査が終了している。
インタビューの結果概要は以下の通りである。
・現地では技能実習制度は好意的に捉えられている。特に好意的に捉えられているのは、研修を受け、技能を習得しインドネシアに帰国貢献できるという技能実習制度の本来の趣旨の点である。
・特定技能制度での来日は、日本語試験や技術試験があるため、これまでの技能実習制度での来日のための研修体制では対応できず、新たな研修プログラムの確立が必要だが、いまだ未確立である。特に、日本語の研修は技能実習生からの帰国者が実施しており、効果的な日本語学習体系が体系化されているとは言い難い。
・送り出しのシステムは複雑化している。どのルート(どの送り出し機関を利用するか)で来日するかによって、当事者の費用が異なってくる。送り出しシステムの整理、費用の明確化が必要である。
・来日者の目的は、外貨を稼ぐというより、海外での経験、技術の習得、将来、インドネシアでよい仕事に就くためなど長期スパンでインドネシアで働くために必要な経験を積むこと等多様化している。
研究員:井上登紀子