国立ハンセン病療養所の住宅計画の変遷にみる居住環境の形成過程

ハンセン病は神経の麻痺、顔や手足の変形、失明などの症状を伴う感染症で、日本では1996年に「らい予防法」が廃止されるまで隔離の対象とされた。その政策を支えたのは、今も全国に13か所残されている国立療養所である。治療法が確立され、事実上ハンセン病患者がいなくなった後もハンセン病療養所として運営され続けている背景には、療養所以外に居場所がなくなってしまった入所者の存在がある。かつては13,000人を超える人々が暮らしていた療養所だが、今では平均年齢が87歳を超え、空家対策に追われる限界集落と化しており、ハンセン病療養所という施設区分を除けば過疎化が進む地方集落のひとつである。
そこで、医療施設ではなく居住施設としてのハンセン病療養所の機能に着目し、社会背景やライフスタイルの変化に対応してきた療養所内の住宅計画の変遷について調査を行った。1909年に最初の公立療養所が設置されてから今日に至るまでの住宅整備状況と居住環境に関する資料を収集し、療養所内外との比較を通してひとつの集落としての療養所と住み手の関係について考察するとともにそれぞれの特徴について明らかにした。

担当研究者:豊橋技術科学大学 建築・都市システム学系 助教 朴 玟貞 Park, MinJeong
研究期間:2020年10月1日~2023年3月31日
研究についてのお問い合わせ先:✉ mjpark@ace.tut.ac.jp